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http://helmutsmits.nl/
Helmut Smitsというアーティストは、「物体を配置して別のものに似せる」というアプローチを追求しているようだ。もとの物体と、その配置や形によって記号的・連想的に生み出される別のものをオーバーラップさせる、という手法である。 この作品の場合、カベに円形に打ったクギがきわめて物質的なのに対して、そこから浮かび上がる「YouTubeの動画待ちアイコン」は情報世界であるネットの中にあり、さらにアイコンという純粋に記号的な存在なので、とりわけギャップが大きい。そのうえ、それは「動画待ちアイコン」ということで、次に出てくる動画への期待感や、「待ち」の感覚と結びついている。実際のYouTubeの動画待ちアイコンは回転するアニメーションなので、その動きを連想させる効果もある。 カベに円形に打ったクギによって、YouTubeの動画待ちアイコンを記号的に連想させると、そのYouTubeの動画待ちアイコン自体に結びついた「待ち」の感覚や、回転という動きまでも、記号的・連想的に引き出されてくる。その連続的な記号の効果が、この作品の魅力だろう